8月16日(日)、京都府京都市の京都テルサで『第21回 全国高校生男子ボディビル選手権大会』が開催され、春日部共栄高等学校3年の甲斐尚(かい・なお/18)選手が男子ボディビル170cm超級で優勝した。
【写真】高校生離れした脚!深く刻み込まれた迫力ある大腿四頭筋を持つ甲斐尚選手

体型がコンプレックスだった小学生時代
今では全国高校生ボディビルの頂点に立った甲斐選手だが、身体を変えたいと思った原点には、小学生時代のコンプレックスがある。
「当時は肥満体型であることを気にして、食事を極端に減らしたうえで、毎日縄跳びや長距離ランニングをたくさん行っていました。本格的なウエイトトレーニングとの出合いは、小・中学生時代に取り組んでいた柔道の補強でした。でも内心では、自分の身体をかっこよくすることにも魅力を感じていたんです」
ボディビルのステージを意識したのは中学3年生のころ。YouTubeで2021年の全国高校生ボディビル選手権を見て、坂本陽斗選手のフリーポーズに心を奪われた。
「坂本さんのフリーポーズを見てずっと憧れていて、自分も出てみたいと思うようになりました」
そして2024年にはマッスルゲート茨城の新人の部、ジュニアの部に挑戦。2025年には、かねてから憧れていた全国高校生男子ボディビル選手権170cm超級のステージに立ったが決勝進出には至らなかった。
そして今年、同じ舞台で頂点をつかんだ。
大会を終えた甲斐選手は「まだあまり実感が湧いていません。とにかく家族や、今まで支えてきてくれた方々に感謝を伝えて、これからも大切にしていきたいです」と話した。
以前は脚トレは「6時間・40〜60セット」
甲斐選手の最大の武器が脚だ。その土台を作った時期には、とんでもない量のトレーニングをこなしていた。
「半年間くらい、脚は週1回で、毎回6時間以上やっていました。40〜60セットくらいです」
単純計算でも、学校の授業時間に迫る長さを一度の脚トレーニングにつぎ込んでいたことになる。
ただし、現在はそのスタイルを続けていない。
大量のセットを経験する中でトレーニング強度やテクニック、狙った筋肉に効かせる感覚を磨いたあと、週2回に分けて1回2〜2時間半、12〜15セット程度へと変更した。すると、脚はむしろ変わったという。
「ただやみくもに長時間やることも大切だと思います。ただ、僕の場合はそこからテンポや、筋肉が収縮したところで止めることなど、一回一回の質を重視するようにしました。そこから脚の筋肉が割れるカットやセパレーションが明確になって、サイズもすごく大きくなりました」
“6時間やったからこそ強くなった”という単純な話ではない。
たくさんやる時期を経験したからこそ、自分に必要な刺激を見極め、少ないセットでも一回一回の質を高められるようになった。
「ただ、スクワットやデッドリフトといった全身を使うような種目では、一定の可動域を確保したうえで重量も上げられるようにしています」
つまり、すべてを軽く丁寧に行うわけでもない。種目によって『効かせる』と『重量を伸ばす』を使い分けている。
白米6合、卵10個の増量も「必要なかったかも」
身体を大きくするため、食事もとにかくたくさんの量を摂取したことがある甲斐選手。
「一時期は一日のノルマとして、白米6合、卵10個、ささみ600g、プロテイン5杯を取っていました。でも今は、その方法はやっていないです。消化吸収の問題もありますし、減量幅も大きくなってしまいます。今考えると、そこまでする必要はなかったのではないかと思っています(笑)」
現在は一つの食材だけにこだわらず、さまざまな食品から栄養を取ることを意識している。
「メンタルや健康のためにも、いろいろな食材から栄養を取るようにしています。学校へ持っていくお弁当以外の食事も、できるだけ自分で用意して、放課後はすぐにジムに行くために、授業やスキマ時間を使って一日の勉強時間を確保していました」
甲斐選手は放課後をできるだけトレーニングに使いたい。だからこそ、学校の授業をしっかり受け、登下校中、食事中、寝る前といった細かな時間を勉強に充ててきたようだ。
「日焼けをしている時間や、有酸素運動をしている最中まで勉強に使うこともありました」
高校生という年代で一つのことに打ち込む以上、すべてを同時に手にすることは難しい。その現実も受け止めたうえで、甲斐選手は競技を選んできた。
今後の目標には、競技成績と並んでもう一つ、大切なものを挙げている。
「いつも支えてくださる周りの方々を幸せにすることです」。高校生らしからぬ目標だ。
6時間、60セットやれば必ず身体が大きくなるわけではない。白米6合を食べれば、誰もが効率よく成長できるわけでもない。甲斐選手自身、一度は極端な方法までやり込み、そこから自分に必要なものを選び直してきた。
身体づくりで重要なのは、“誰かより多くやること”ではなく、自分の身体の反応を見ながら方法を更新していくことなのだろう。
【JBBFアンチドーピング活動】JBBF(公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟)はJADA(公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構)と連携してドーピング検査を実施している日本のボディコンテスト団体で、JBBFに選手登録をする人はアンチドーピンク講習会を受講する義務があり、指名された場合にドーピング検査を受けなければならない。また、2023年からは、より多くの選手を検査するため連盟主導で簡易ドーピング検査を実施している。
執筆者:柳瀬康宏
『月刊ボディビルディング』『IRONMAN』FITNESS LOVE』などを中心に取材・執筆。保有資格は、NSCA-CPT,NSCA-CSCS,NASM-CES,BESJピラティスマット、リフォーマー。メディカルフィットネスジムでトレーナーとして活動もしており、2019年よりJBBF、マッスルゲート、サマースタイルアワードなどのボディコンテストに毎年挑戦している。
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取材・文:柳瀬康宏 写真:中原義史
-JBBF選手, コンテスト
-JBBF, 全日本学生ボディビル選手権










