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【“C”から始まる重要成分②】未解明部分が多い必須ミネラル!米フィットネス誌が分析するクロミウム

健康科学やトレーニング科学を学んでいると“C”から始まる重要成分が多いことに気づく。その中でも4つの「“C”から始まる重要成分」について紹介したい。

第2回目は糖質や脂質の代謝を助け、糖代謝やインスリンの働きをサポートする必須ミネラルの一つであるクロミウム(Chromium)だ。

本記事では米フィットネス誌がまとめたクロミウムに関するレポートをわかりやすく解説する。

(IRONMAN2025年11月号「from IRONMAN USA」より転載)

 

血糖値を正常に保つ効果

クロミウムは、食事から摂取する必要がある必須微量ミネラルの一つだ。その必要量はごくわずかだが、インスリンとの関わりが示唆されており、減量や筋発達に間接的に影響すると考えられている。

クロミウムが必須ミネラルとして確認されたのは、1950年代に行われたラットの実験においてである。クロミウムレベルを低下させたラットにブドウ糖不耐症が観察されたことから、その重要性が示唆された。

この実験に続き、ヒトでの臨床試験が行われた。クロミウムを投与しないグループでは耐糖能異常の症状が見られたが、クロミウムの静脈内投与によってこの症状は改善された。耐糖能異常とは、ブドウ糖を正常に処理できなくなる、糖尿病の一歩手前の状態を指す。この結果は、クロミウムが血糖値の正常化に不可欠であることを強く示唆している。

 

インスリンの働きを強める

クロミウムは、インスリンの働きを高める性質があると考えられている。インスリンは血中のブドウ糖を細胞へ運搬するホルモンであり、筋細胞を肥大させるアナボリックホルモンでもあるが、脂肪細胞を肥大させる側面も持つ。このため、減量中はインスリン分泌を抑えるために食事を工夫する必要がある。

しかし、ここで重要なのは、クロミウムがインスリンの「働き」を強めることであり、その「分泌量」を増やすことではないという点だ。クロミウムがインスリンを活性化させる詳細なメカニズムはまだ解明されていないが、インスリンの細胞受容体への結合を促す説や、細胞内の活性化物質の放出を促す説などが提唱されている。

これまでの臨床実験では、インスリン感受性の低い糖尿病患者に対するクロミウムの効果は一定せず、有益な結果と変化が見られない結果が散見している。この最大の理由は、クロミウムがヒトの身体に吸収されにくいということが挙げられる。吸収率が比較的高いと言われるピコリン酸クロミウムでさえ、平均吸収率は3%未満だとされている。

クロミウムの吸収率が低いことを考えれば、より多くの量を摂取する必要があるのかもしれない。実際、クロミウムの1日の推奨摂取量は200μgだが、有益な結果をもたらした実験では、被験者に1日1000μgもの量が投与されている。

 

ビール酵母のサプリメント

ビール酵母は、1950年代から60年代初期にかけてボディビル界で人気を集めたサプリメントだ。

当時、ビール酵母には耐糖能因子が含まれていると考えられていたため、摂取した炭水化物をより効率的に利用することが目的とされていた。耐糖能因子とは、血中のブドウ糖を処理する能力に影響する因子のことであり、耐糖能が高まることは、ブドウ糖が効率的に体内で代謝されることを意味する。

この頃の科学者が耐糖能因子と見なしていたのがクロミウム、ビタミンB群のナイアシン、そして複数のアミノ酸などで、これらが一つの複合体として存在すると推測されていた。

実際、ビール酵母にはクロミウム、ナイアシン、そして多種類のアミノ酸がバランスよく含まれていたため、当時のボディビルダーはビール酵母のサプリメントをよく利用していた。

ちなみに、クロミウムは、ビール酵母以外にも全粒穀物、キノコ類、コーヒーや紅茶、赤ワインにも含まれている。

 

クロミウムの有効性は検証中

インスリン分泌量が驚きの結果に

クロミウムがヒトにもたらす効果については、いまだに確証が得られず研究者の間でも意見が分かれている。しかし、近年新たな実験が行われたので紹介したい。

この実験では、信頼性が高い二重盲検法が採用された。実験期間は合計16週間にわたって行われ、健康で非肥満体型の成人31名が参加した。

クロミウムとインスリン関係を調査した二重盲検法

被験者は2つのグループに分けられ、それぞれプラシーボとピコリン酸クロミウムを摂取した。実験の後半では両グループの摂取するサプリを入れ替えることで、どちらの被験者も両方の条件を経験することとなった。

補足すると、二重盲検法では被験者だけでなく実験の実施者にも情報が伏せられるため、一切の心理的要素が結果に影響されないと考えられる。

実験の結果、インスリンの感受性は、クロミウム群でもプラシーボ群でも大差は見られなかった。

さらに驚くべきことに、一部の被験者には、ブドウ糖が感知されにくくなり、インスリンが過剰に分泌されるという、サプリメントの目的とは逆の現象が観察された被験者がいずれも非肥満体であり、高血糖の傾向がないにもかかわらずブドウ糖不耐症が観察されたのであれば、実験で用いられたクロミウムが関与した可能性も捨てきれない。

研究者たちは、今回の結果が一時的な反応である可能性や、個体差によるものである可能性を指摘し、全ての人が悪影響を受けるわけではないことを強調している。

しかし、非肥満者がクロミウムを摂取してもインスリン感受性が高まらないどころか、大量摂取が感受性を鈍らせる可能性も否定できない。この点について、今後のさらなる研究が待たれる。

アナボリック作用はあるのか?

クロミウムは、そのインスリンの働きを増強する可能性から、多くのボディビルダーに支持されてきた。インスリンが活性化されれば、アナボリックな作用が期待できるからである。

1980年代後半に発表された研究はこの考えを裏付けするものだった。ピコリン酸クロミウムを摂取するグループとプラシーボのグループを比較したところ、クロミウムのグループのほうが筋量、筋力を伸ばし、体脂肪を減少させた。

しかし、この研究にはいくつかの問題点が指摘されている。まず、実験期間中に被験者の食事が厳密に管理されていなかったため、筋量増加が単に摂取カロリーの増加によるものであった可能性もある。

また、体組成変化の確認のためにキャリパーという測定器が使用されたが、その精度が問題視された。キャリパーは、皮膚をつまんで皮下脂肪の厚みを測る簡便な方法だが、体脂肪率を正確に測定することは難しい。

実際、この実験の後に高度な体組成測定法を用いて同様の実験が行われたが、クロミウムを摂取したグループの筋量や筋力、体組成に変化は見られなかった。

 

クロミウムの毒性論争

クロミウムの毒性は、長年にわたり論争が続いている。ある研究では、ハムスターの卵巣細胞を高濃度のピコリン酸クロミウムにさらしたところ、細胞の複製に不可欠なDNAに損傷が見られた。DNAが損傷したまま細胞分裂が進むと、異常な細胞が生成され、腫瘍形成のリスクが高まる。

ただ、この研究結果については反論があった。先に述べたとおり、クロミウムの吸収率は極めて低いため、ヒトの体内で特定の細胞が高濃度のクロミウムにさらされる状況は考えにくいとされている。実験で用いられた濃度をヒトに適用するには、極めて大量のクロミウムを摂取する必要があるが、そのような量が体内に吸収されることはないとされる。

一方で、クロミウムは体内の様々な組織に貯蔵され、特定の部位では長期間にわたり保持されることが分かっている。微量であっても、クロミウムが特定の細胞に長期貯蔵された場合の健康被害については、現時点ではまだ明らかになっていない。

健康被害例

ヒトへの健康被害が報告された事例はいくつかある。

①体脂肪を減らすために1日1200~2400μgのクロミウムを5カ月間摂取した女性のケースでは腎不全を発症した。

②別の女性も1日600μgのクロミウムを6週間摂取したところ、同じように腎不全を患った。
③24歳のボディビルダーが、ピコリン酸クロミウムのサプリメントを1200μg摂取したところ横紋筋融解症が見られた。これは筋肉が急激に分解されてしまう症状である。

なお、いずれのケースもクロミウムが直接的な原因であると結論づけられていない。

有毒な工業用クロム

クロミウムには、食品やサプリメントに含まれる三価クロムと、車のバンパーなどに使われる有害な六価クロムがある。六価クロムは有害物質として知られ、過去に水道水が汚染されたことで発がんリスクの上昇が問題となった事例もある。

これは映画『エリン・ブロコビッチ』でも描かれたため、広く知られている。三価クロムは一般的に安全とされている。

クロミウムサプリメントの安全性

クロミウムは、単体のサプリメントだけでなく、マルチミネラル、プロテイン、ミールリプレイスメントなど、多くの製品に含まれている。日常的に様々なサプリメントを摂取するアスリートは、意図せず大量のクロミウムを体内に取り込んでいる可能性がある。

クロミウムの吸収率が低いことから、大量摂取しても問題ないとも言えるが、その長期的な影響についてはまだ多くの疑問が残されているため、慎重な判断が必要だろう。

 

 

 

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