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【スクワット305kg日本記録】石川葵の「停滞知らず」成長術!消防士と両立するセルフケア・食事・睡眠管理

パワーリフティング男子83kg級(クラシック部門)、種目別スクワットで305kgの日本記録・アジア記録をもつ石川葵選手。競技歴は5年ながらも、長い停滞期をほとんど経験することなく記録を伸ばし続けてきた。その背景にあったのは、「昨日の自分を少しでも超えたい」という前向きな練習姿勢と、トレーニング以上に徹底されたケア・食事・睡眠の管理だった。消防士として働きながら進化を続ける石川選手に、『停滞知らず』の成長を支える思考と習慣を伺った。

取材・文:池田光咲 試合写真:WhiteLightsMedia Web構成:中村聡美

2026年6月13日~21日にリトアニアで開催された『2026年IPF世界クラシックパワーリフティング選手権大会』。スクワットの第3試技で305kgの日本記録・アジア記録をたたき出した

友人の誘いで知ったパワーリフティングの世界

━━競技歴5年目にしてスクワット305㎏と、83㎏級では日本新記録を残した石川選手。競技を始めたきっかけを教えてください。

石川 消防士になるために専門学校へ通っていた5年ほど前、一緒に勉強していた友人から、パワーリフティングジムへ行ってみないかと誘われたことがきっかけです。当時は、現在所属する山梨県のグランディールがオープンする時期で。友人と見学へ行き、そのまま通い始めました。

石川選手が所属する山梨県のパワーリフティングジム「グランディール」

━━それ以前から筋トレには取り組んでいたのでしょうか。

石川 中学、高校と6年間サッカーに打ち込んでいました。ただ、高校最後の大会は怪我で出場できず、悔しさがずっと残っていて。その気持ちをぶつけるように、卒業後は独学で筋トレを始めました。温泉施設に併設されたトレーニングルームへ通っていましたね。この頃はパワーリフティングという競技すら知りませんでした。

━━グランディールへ通い始めて、初めて競技を知ったのですね。

石川 そのため、最初から大会出場を目指していたわけではありません。フォームを教えてもらいながらBIG3に取り組むうちに、扱える重量がどんどん伸びていって。身体が変わり、できなかったことができるようになる。その感覚が面白くて、次第にのめり込んでいきました。専門学校時代は、勉強とジムの繰り返しでした。

━━そこからなぜ大会出場を意識するようになったのでしょう。

石川 自分がどれくらい強いのか、競技ルールに則した形ではどの位置にいるのか知りたいと思うようになったんです。ただ、出場を決めたものの、コロナ禍での大会中止や、自分の怪我が重なりました。結局デビュー戦までは1年以上かかりましたね。

━━初めて出場した公式戦の手応えはいかがでしたか?

石川 当時の日本記録と自分の記録を比べたときに、スクワットなら狙えるかもしれないと思いました。その後、国体予選につながる関東大会へ出場し、デビュー2戦目でジュニア日本記録を更新。そこで初めて、「自分はスクワットに向いているのかもしれない」と感じるようになりました。

「昨日の自分を少しでも超える」
積み重ねが生んだ停滞知らずの成長

━━石川選手は競技開始から現在まで、記録が伸び続けています。最も伸びた時期はいつでしょうか。

石川 始めた直後から、ジムへ行くたびに自己ベストが出るような時期が続きました。就職して練習時間が限られてからも、その中で何ができるかを考えてきたので、重量が何カ月も動かないような停滞期は、ほとんど経験していません。

━━多くの選手が一定の重量で壁にぶつかる中、停滞を感じなかった理由をご自身ではどう分析していますか?

石川 昨日の自分を少しでも超える意識を徹底して持ち続けてきたからだと思います。ノートに練習記録を残し、重量・回数のどちらか一つでも前回の練習を上回れるようにしていました。

━━非常にシンプルですが、確実な積み重ねですね。

石川 筋トレ自体が好きだったので、補助種目も限界近くまで追い込んでいました。強いだけではなく、「かっこいい身体になりたい」という思いもあったので、肩や腕も含めて全身を鍛えていました。BIG3でも高回数のセットを避けず、きついことを積極的に行ったことで、筋力だけでなく心肺機能や練習をやり切る土台も作られたと思います。

━━当時の練習内容を教えてください。

石川 週4回ほどで、スクワット中心の日、デッドリフト中心の日、ベンチプレス中心の日という形で回していました。1日3〜4時間は行っていたと思います。

━━練習量の多さだけが、停滞しなかった理由なのでしょうか。

石川 むしろ、それ以上に大きいのはコンディショニングです。僕は先天的に腰椎の状態が良くなく、小学6年生から、ストレッチや軽い筋トレをしないとすぐに腰痛に襲われてしまう状態でした。だからこそ、運動前後のコンディショニングは幼い頃から習慣になっていたんです。

━━怪我を避けるために始めた習慣が、競技力向上にもつながったのですね。

石川 多くの方は、筋トレは頑張れてもストレッチや食事、睡眠のような地味な部分は後回しにしがちです。でも、僕はそこをやらないと動けなくなるので、徹底していました。怪我で一時的に記録が停滞したことはありますが、回復中もケアや食事管理を続けたことで、復帰後もすぐに元の状態へ戻れました。重量そのものに壁があったというより、怪我によって足止めされた経験の方が多いですね。

独学からコーチングの導入へ
2カ月でトータル27・5㎏の自己ベスト更新

━━2024年のアジア大会までは、基本的に独学で取り組んでいたそうですね。

石川 基本的にメニューは自分で考えていました。しかしアジア大会後、初めてコーチをつけたことで、自分では思いつかなかった視点や種目に触れられるようになりました。

━━コーチングを受けて最も大きく変わったことを教えてください。

石川 メニューを自分で考えなくなったことで、練習により集中し、頭の中がすっきりした感覚を覚えました。さらに、自分では良いと思っていた動きに対して、別の視点から修正をもらえたことも大きかったです。

━━この時期にはデッドリフトもナロースタンスからワイドスタンスへ変更しましたね。

石川 アジア大会で金子万生選手のワイドデッドリフトを見て、自分も挑戦したいと思いました。そこでワイドに適応するためのメニューを組んでもらったところ、デッドリフトが17・5㎏伸びました。可動域や疲労が変わり、スクワットにも好影響が出て、2カ月でトータル重量は27・5㎏更新できました。

デッドリフトは第2試技で287.5kgを成功。第3試技で300kgに挑戦するも失敗し、12位となった

━━メニューの特徴はどのようなものでしたか?

石川 BIG3を軸にした全身法で、ベンチプレスは毎回行っていました。ラーセンベンチやナローなどのバリエーションも入り、補助種目も多かったです。RPE9程度まで追い込む種目もあり、練習時間が伸びた分、結果もついてきました。

世界選手権でスクワットに続き、ベンチプレスはすべての試技を成功

━━かなりハードな内容ですね。

石川 これをやり切るには、練習以外の時間も整えなければなりません。食事・睡眠・ストレッチの徹底は必須です。コーチが良いメニューを作っても、選手が応えなければ結果は出ません。両方がかみ合ったことで、一気に記録が伸びたのだと思います。

━━山川太希さんのコーチングでは、どのような変化がありますか?

石川 現在は仕事や生活も含め、僕のライフスタイルに合わせてメニューを組んでもらっています。自分がやりたいトレーニングや、「かっこいい」身体も追求したいという希望を伝え、その意向を取り入れてもらっています。一方で、加重サイドプランクなど、自分では選ばない種目も入ってきて。客観的な視点と自分の感覚が融合し、毎回ジムへ行きたいと思える内容になっています。

305㎏を支える股関節と足裏
日常に組み込まれたケア

━━スクワットで最も重要だと考えているポイントを教えてください。

石川 股関節を使ってしゃがむことです。股関節を使えるようになると、膝だけでなく複数のポイントで重量を支えることができるため、安定性が増すんです。ボトムへ向かう局面でも、自分で動きをコントロールできます。

━━足裏の感覚も重視しているそうですね。

石川 足裏を整えることで、指で地面を捉える感覚が高まりました。その感覚と股関節の動きがつながり、スクワットはさらに安定したと思います。僕の記録は305㎏が限界だと思っていません。練習ではそれ以上触れていますし、高重量に対する恐怖心もありません。

━━では、実際に石川選手は日頃どのようなコンディショニングに取り組んでいるのでしょうか?

石川 運動前はトータル30分、動的ストレッチやフォームローラーを使って身体をほぐしています。終了後は15分ほど静的ストレッチを行いますし、入浴後のストレッチも欠かしません。起床後のストレッチポールを使ったストレッチも習慣になっています。

━━練習前だけでも約30分をコンディショニングに割くのですね。

石川 周囲からは長いと言われます(笑)。でも、300㎏を超える重量を扱うなら、それ相応の準備が必要です。ストレッチも練習の一環と考え、今後も続けていくつもりです。

━━消防士という体力仕事との両立では、何を最優先にしていますか?

石川 睡眠です。24時間勤務では夜中に出動することもあり、帰宅後も睡眠不足なことが多いです。そんな日は、部屋を暗くし、アイマスクや耳栓を使って、睡眠をとります。眠れていなければ、練習へ行かない選択をするほどです。無理をして怪我をすれば、仕事にも競技にも影響が出ます。始めた頃に怪我をした経験があるからこそ、今は休む判断もトレーニングの一部だと考えています。

━━筋肉質な体型も印象的な石川選手ですが、食事面で意識していることは?

石川 低脂肪・高タンパク・高炭水化物が基本です。外食では揚げ物を避け、朝はオートミールを食べています。腸内環境や、自分の身体がどの食品に反応しやすいかも見ています。ただ、甘い物は好きなので、普段を整えた上で楽しむ日はしっかり楽しみます。厳しく縛るのではなく、長く続けられる形で管理することが大切です。

━━成長の止まらない石川選手には日本チャンピオンの期待もかかります。今後の目標を教えてください。

石川 まずはスクワットの日本記録とアジア記録を更新し続けること。そして、スクワット以外も伸ばし、83㎏級で800㎏を達成したいです。記録を止めないためにもこれまで通り、練習と同じ熱量で準備と回復を積み重ねていきます!

いしかわ・あおい
2001年4月21日生まれ、山梨県中央市出身。山梨県のパワーリフティングジム「グランディール」所属。消防士として勤務する傍ら、パワーリフティング男子83kg級(クラシック部門)で活躍する。2024年ジュニアアジア選手権優勝、2025年には日本人として初めて83kg級スクワット300kgを達成。現在は305kgの日本記録・アジア記録まで伸ばしている。ベンチプレス170kg、デッドリフト287.5kg、トータル762.5kgがッドリフト以外の自己ベスト記録。徹底したコンディショニングとセルフケアを武器に、83kg級トータル800kgを目標にさらなる記録更新を目指している。今年2月のジャパンクラシックパワーリフティング選手権では83kg級3位

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