9月13日に開催されたベストボディ・ジャパンが主催する『BEST BODY UNIVERSE プロ選手選考会 2026 名古屋』で、プロ格闘家の杉山しずか(すぎやま・しずか/39)さんがフィットネスモデル部門(※)に出場し、プロカード獲得権利を手にした。
※バランス良く筋肉の付いたスポーティーで美しいスタイルが評価される部門
杉山さんは2008年にプロMMAデビュー。RIZINやDEEP JEWELSなどで活躍し、PANCRASE(パンクラス)では2度にわたって女子フライ級王座に就いたトップファイターだ。9月23日には約18年間に及ぶプロ格闘家生活の最後となる引退試合を控えている。格闘技人生の大きな節目を目前に、杉山さんはもう一つの世界で新たな“プロ”への切符をつかんだ。

2年前の総合グランプリから再挑戦
杉山さんがボディコンテストに挑戦するのは約2年ぶりだ。
2024年にはベストボディ・ジャパンのフィットネスモデル部門で日本大会に出場し、レディースクラス優勝に加えて総合グランプリも獲得。一つの頂点に立ったことで、その後についてはいったん立ち止まって考えたという。
「総合グランプリを取ったので、一回『この後どうしようかな』と思ったところがありました。それから1年は格闘技に集中しようという気持ちもありました」
競技から離れている間も大会には足を運び、選手たちの姿を見続けていた。そんな中で新たにプロカテゴリーが始まったことを知り、再びステージに立つ気持ちが芽生えた。
「プロ部門というカテゴリーが始まったので、またちょっと挑戦する気持ちになったのが今年ですね」
BEST BODY UNIVERSEは、ベストボディ・ジャパンが設立したプロカテゴリー。プロ選手選考会では、過去の日本大会出場者や上位入賞経験者など一定の実績を持つ選手が審査を受け、基準を満たした選手にプロカード獲得の権利が与えられる。
今回、杉山さんはフィットネスモデル部門に出場。結果が出るまでは、これまで数々の大舞台を経験してきた格闘家であっても緊張があったという。
「緊張とプレッシャーはありました。結果が出て、すごくホッとした感じがあります」
約3カ月で15kg減量。「食べない」から「食べながら落とす」へ
前回の挑戦と今回で大きく変えたのが、身体の作り方だった。
2024年は約2カ月半で14kgほど減量。一方、今回は約3カ月をかけて約15kgを落としたという。
スタートは68kg前後。ステージでは54kg前後まで体重を落とした。
数字だけを見れば今回も大幅な減量だが、本人の中では方法に明確な変化があった。
「前は食べない減量方法をやってしまったんですけど、今回はちゃんと食べながら、というのを意識しました」
細かな摂取カロリーを決めるというより、体重の推移を確認しながら食事を調整した。
それが可能だった背景には、格闘技選手ならではの運動量もある。
「格闘技もやっているので、動きながら落とさなきゃな、という感じでした」
さらに、前回の経験があったからこそ、今回はあらかじめ明確なゴールを設定できた。
「前回は自然に落ちたんですけど、今回は『何kgまで落とそう』という目標を立てられたのが大きかったかなと思います。前回の経験があったからこそですね」
身体だけでなく、ステージでの表現にも「プロ」を意識した。
「時間をかけて落とすことで、もっと形のいい身体を作りたいと思いました。あとはプロという部門なので、責任感のあるパフォーマンスが必要かなというのを意識して練習しました」
杉山さんが考えるフィットネスモデル部門の魅力は、単純な筋肉量だけを競うものではないことだ。
「ボディビルだったり、ほかの団体とはちょっと違って、健康的でスポーティーというところが、いわゆるゴリゴリ筋肉を追求する団体とは少し違うと思います」
身体そのものに加え、ポージングやステージ上での立ち居振る舞いも重要になる。
「ポージングも自由が少ない団体なので、他の人と比べたときに、より正確にポージングできているかというところも大事なのかなと思います」
格闘技では「やりきった」。次はフィットネス部門の価値を上げる存在へ
杉山さんは2008年にプロMMAデビューした。
女子格闘技団体JEWELSの旗揚げ大会からキャリアをスタートさせ、その後はDEEP JEWELSやRIZINなどで活躍。出産による競技離脱と復帰も経験しながら、女子MMAの第一線で戦い続けてきた。
2024年には、プロデビューから約16年をかけてPANCRASE女子フライ級王座を獲得。2025年に一度王座を失ったものの、2026年3月には再び頂点に立った。
そして9月23日、プロ格闘家として最後の試合を迎える。
引退を決めた理由について、杉山さんはシンプルにこう話した。
「もう、やりきったというところが大きいですね」
格闘技人生に区切りをつける一方、新しいボディコンテストの目標はすでに始まっている。
プロカード獲得後に見据えるのは、10月11日のプロ大会、そして11月22日に予定されている大会だ。
「両方勝つことですね」
さらに、その先には競技成績以上の目標がある。
長年格闘技界で戦ってきた杉山さんは、王者になってから「自分自身がベルトや団体の価値をどう高められるか」を意識してきたという。
「今までも格闘技でチャンピオンとしてベルトをもらう中で、ベルトの価値を上げられるように、団体の価値を上げられるようにということを結構意識してやってきました」
その考え方を、次はフィットネスの世界へ持ち込む。
「これからはベストボディ・ジャパンのフィットネス部門の価値を上げられるように。そうすることで、どんどん広がっていくようにできる存在になりたいと思っています」
約18年間戦い続けた格闘技のリングを降りる10日前、新しい世界でプロへの扉を開いた杉山さん。格闘家として培った身体と精神、そして“競技そのものの価値を高めたい”という姿勢は、今度はフィットネスのステージで表現されていく。
取材・文:FITNESS LOVE編集部 撮影:上村倫代










