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HYROX(ハイロックス)全8種目を徹底解説|順番・距離・重量・ルールと日本トップ選手の攻略法

ランニングと8つのファンクショナルワークアウトを交互に行う「HYROX(ハイロックス)」。スキーエルゴ、スレッドプッシュ、バーピーブロードジャンプ、ウォールボール……と聞いて、「結局どの種目が一番キツい?」「どこで頑張ればタイムが縮まる?」と疑問に思う人も多いだろう。

しかし、日本トップレベルの選手たちが口をそろえて語るのは、「すべての種目を全力でやれば速くなるわけではない」ということだ。

今回は日本トップクラスでHYROXを戦うWATARUさんと、2026年HYROX世界選手権に出場した前川早紀選手が、全8種目を徹底解説。WATARUさんによるレース全体を見据えたペース配分と、前川選手によるフォームや身体の使い方を組み合わせ、種目の順番、距離、重量、基本ルールから、実戦で使える攻略法まで紹介する。

HYROXとは?1kmラン+8種目を繰り返すフィットネスレース

ランニングと8つのファンクショナルワークアウトを交互に行うフィットネスレース「HYROX」。世界共通のフォーマットで行われるため、初挑戦でも事前に「何を、どの順番で、どれだけ行うのか」が分かっているのが特徴だ。

しかし、種目を単体でこなせることと、HYROXで速く走れることは同じではない。

1kmのランニングを挟みながら8種目を攻略しなければならず、前半で使った数十秒が、後半では数分の失速につながることもある。必要なのは筋力や心肺能力だけでなく、「どこで攻め、どこで抑えるか」というレース戦略だ。

そこで、日本トップレベルでHYROXを戦うWATARUさんと、2026年HYROX世界選手権に出場した前川早紀選手のアドバイスをもとに、HYROX全8種目を徹底解説する。(引用元:IRONMAN2026年4月号、Woman’s SHAPE Vol.32)

WATARUさんが教えるのは、レース全体を見据えたペース配分や種目間のつながり。一方、前川選手のアドバイスは、身体の使い方やフォームといった実践的な技術が中心だ。

「何をする競技なのか」から「どうすれば効率よく攻略できるのか」まで、これからHYROXに挑戦する人にも分かるように紹介していこう。

1.  HYROX全8種目の順番・距離・重量一覧

HYROXでは、1kmのランニングとワークアウトステーションを交互に8回行う。つまりランニングは合計8km。その間に8種類のワークアウトをこなし、スタートからフィニッシュまでの合計タイムを競う。

種目の順番は世界共通で、SkiErg、Sled Push、Sled Pull、Burpee Broad Jump、Rowing、Farmers Carry、Sandbag Lunges、Wall Ballsの順。基本的なフォーマットも世界共通となっている。

シングルカテゴリーの主な規定は次の通り。

順番種目Women OpenMen OpenWomen ProMen Pro
1SkiErg1,000m1,000m1,000m1,000m
2Sled Push50m/102kg50m/152kg50m/152kg50m/202kg
3Sled Pull50m/78kg50m/103kg50m/103kg50m/153kg
4Burpee Broad Jump80m80m80m80m
5Rowing1,000m1,000m1,000m1,000m
6Farmers Carry200m/2×16kg200m/2×24kg200m/2×24kg200m/2×32kg
7Sandbag Lunges100m/10kg100m/20kg100m/20kg100m/30kg
8Wall Balls100回/4kg100回/6kg100回/6kg100回/9kg

スレッドの重量はプレートだけではなく、スレッド本体を含めた総重量。2026-27シーズンでもこれらの距離・重量は基本的に継続されている。(NinjAthlete⁠)

では、日本トップ選手はそれぞれの種目をどう攻略しているのか。

01 SkiErg(スキーエルゴ)1000m

スタート後、最初の1kmランを終えたところで待っているのがスキーエルゴだ。

スキーのポーリング動作を再現したマシンを使い、1,000mを漕ぐ。腕だけでハンドルを引くのではなく、上半身、体幹、下半身を連動させて出力することが重要になる。

最初の種目で身体もフレッシュなため、ついペースを上げたくなる。しかしWATARUさんが最も警戒するのが、まさにこの「最初だから頑張れる」という感覚だ。

「ここで飛ばしすぎないようにするのは大切だと思います。自分の中である程度合格点を決めて、そのタイムを目指すようにしています」

WATARUさんの基準は約4分。

もちろんスキーエルゴ単体ならそれ以上のペースでも漕げる。しかし、その後にはまだ7kmのランと7種目が残っている。

以前は「トップでスキーを抜けていくのが気持ちよかった」と序盤から攻めることもあったというが、現在はダンパーをあえて軽めに設定し、筋肉の疲労をできるだけ残さないことを優先している。

つまりスキーエルゴは「どれだけ速く終えるか」より、「どれだけ余力を残して終えられるか」という視点も重要になる。

一方、前川選手がポイントとして挙げるのは、ストロークの最初だ。

「最初の50cmが一番大切です。高い位置から体重をしっかり乗せて、一気に引き下ろしてください。最初の初速が上がるだけで、効率よく距離を伸ばせます」

腕で力いっぱい引くのではなく、高い位置から体重を乗せ、身体全体でハンドルを加速させる。

WATARUさんの「出力を上げすぎない」という戦略と、前川選手の「一回のストロークを効率化する」という技術を組み合わせれば、無駄な消耗を防ぎながら1,000mを進むことができる。

最初から全力で飛ばす種目ではない。

これがスキーエルゴ攻略の大前提だ。

02 Sled Push(スレッドプッシュ)50m

2回目の1kmランを終えるとスレッドプッシュ。

規定重量のスレッドを押し、12.5mの区間を4本、合計50m進む。割り当てられたレーンを使用し、方向転換する際にはスレッド全体がラインを越える必要がある。(HYROX⁠)

HYROXの中でも、実際に体験して「想像以上に重かった」と感じる人が多い種目だ。

スレッドと床面との摩擦によって体感負荷も変わるため、練習時と大会当日で同じ重量でも感覚が異なる可能性がある。

WATARUさんは8種目の中でも、このスレッドプッシュを特にハードな種目として挙げる。

「個人的には一番ハードな種目だと感じています。競技的には早く終わらせたほうが良いのはもちろんですが、ここで無理に押しすぎると走れなくなるので、あえて刻みながら行います

ポイントは「押し切れるから押し切る」と考えないこと。

WATARUさんは12.5mを一気に進める能力があっても、必要に応じて途中でリカバリーを入れる。

サッカーやボディメイクの経験から大腿四頭筋が攣りやすいという自身の特徴も把握した上で、後半の失速を防ぐためだ。

HYROXはスレッドプッシュ選手権ではない。

数秒縮めるために脚を使い切り、その後の6kmでペースを落としてしまえば結果的にはマイナスとなる。

前川選手はフォームについて、こう表現する。

身体を一本の突っ張り棒にするイメージです。かかとから骨盤まで一直線を意識して、体重をソリに預けながら細かい歩幅で押し続けると力が逃げません」

腕だけで押そうとすると、身体とスレッドの間で力が逃げてしまう。

身体を一直線にしてスレッドへ体重を預け、細かな歩幅で脚を動かす。

「脚力+体重+姿勢」の3つを利用することが攻略のポイントになる。

03 Sled Pull(スレッドプル)50m

続くスレッドプルは、ロープを使って重量物を自分の方向へ引き寄せる種目。

こちらも12.5m×4本の合計50mだ。

スレッドプッシュとは違い、背中や腕、握力への負担が大きくなる。さらに、決められたエリア内でロープをさばきながら動く必要があり、単純な筋力だけでなく技術差も表れやすい。

WATARUさん自身、HYROXを始めた当初は最も苦戦したという。

初レースとなった台北大会では6分48秒。しかし練習を重ね、半年後のソウル大会では4分22秒まで短縮した。

「多くの選手が最も苦戦する種目で、私自身も最初は一番苦戦しました。ただ、その経験があったからこそ、重点的に練習を重ね克服することができました。今では得意種目の一つになっています」

ポイントは腕だけで引かないこと。

体重を後方へ移動させながら脚も使うことで、上半身と握力への負担を抑えられる。

これは後半戦にも大きく影響する。

「ソウル大会では下半身をうまく使ってスレッドプルをクリアできたので、握力が重要なファーマーズキャリーでも良いタイムを出すことができました」

HYROXでは、一つの種目で使った筋肉が数十分後に再び必要になる。

スレッドプルで握力を使い切れば、6種目目のファーマーズキャリーに影響する。そのため「その種目を終わらせる」だけではなく、「何を温存して終えるか」まで考えなければならない。

前川選手が重要視するのはロープの処理だ。

ロープをきれいにさばくこともかなり重要です。ロープを足元で踏まないよう横にまとめて、安定した足場を作ることを意識してください」

筋力があっても、足元のロープを踏んでしまえばスムーズに動けない。

スレッドプルは「引く力」だけでなく「ロープをさばく技術」まで含めて一つの種目と考えたい。

04 Burpee Broad Jump(バーピーブロードジャンプ)80m

4種目目は、バーピーと前方へのジャンプを繰り返して80m進むバーピーブロードジャンプ。

ここで前半4種目が終了する。

見た目以上にルールが細かい種目でもある。

バーピーでは胸を明確に床につける。ブロードジャンプでは両足をそろえて踏み切り・着地する。次のバーピーを始める際、両手を置く位置はつま先から前方30cm以内。最後は両足でフィニッシュラインを越える必要がある。

疲労によってフォームが乱れるほど、No Repやペナルティにつながりやすくなる。

WATARUさんは大きく跳んで距離を稼ぐタイプではない。

私は小刻みなジャンプで淡々と前に進んでいくタイプです。とにかくキツくても無心で前に進み続けることを意識しています

一回のジャンプを大きくすれば、80mを終えるまでの回数を減らすことはできる。

しかし、その分だけ下半身へのダメージは大きくなる。

WATARUさんが重視するのは、一発の飛距離ではなく再現性だ。

「ペナルティも取られやすい種目なので、焦ってフォームが雑にならないようにも気をつけています。しっかり胸を床につけて、確実に飛ぶ。スピードよりも再現性を優先する方が大切だと感じています」

そして前川選手も「リズム」を最重要ポイントとして挙げる。

「とにかく一定のリズムを崩さないことです。もし休憩するなら立ったままではなく、下で呼吸を整えるようにするとスムーズに動き続けられます

苦しくなったときに立った状態で完全停止するより、バーピーの低い位置で一度呼吸を整えてから次の動作へ入る。

速い・遅い以上に「止まらないリズム」を作れるかどうかが80mのタイムを左右する。

05 Rowing(ローイング)1000m

5km目のランを終えたところでローイング。

ローイングマシンを使用して1,000mを漕ぐ。

脚、体幹、腕を連動させる全身運動だが、WATARUさんはここを「タイムを稼ぐ場所」というより、後半へ向けて身体を整える場所として考えている。

最初のスキーエルゴと同様に、無理のないペース配分を意識しています。もちろん楽なワークアウトではありませんが、バーピーブロードジャンプで消耗した体を、少しリカバリーするようなイメージで取り組んでいます」

8種目の中で唯一、座った状態で行える種目でもある。

ここまでに5kmを走り、スキーエルゴ、スレッドプッシュ、スレッドプル、バーピーブロードジャンプを終えている。

その状態でローイングまで全力で攻めれば、その後の3kmランと3種目に響く可能性が高い。

だからこそ、「漕ぎながら回復する」という発想が重要になる。

前川選手もローイングを「攻める休憩」と表現する。

腕ではなく脚を使って漕ぎます。戻るときはしっかり脱力して呼吸を整えることで、次の種目へ向けた『攻める休憩』になります」

一回ごとのストロークすべてに力を入れ続けるのではなく、脚で強く押した後のリカバリー局面では余計な力を抜く。

「速く漕ぐ」と「力み続ける」は違う。

ローイングは、効率的に出力しながら後半戦へ身体を立て直すポイントでもある。

06 Farmers Carry(ファーマーズキャリー)200m

両手にケトルベルを持って200mを進むファーマーズキャリー。

OpenではWomenが16kg×2、Menが24kg×2。Men Proになると32kg×2を運ぶ。

動作自体は非常にシンプルだが、握力、僧帽筋、体幹、下半身まで全身への負担が大きい。

WATARUさんは、この種目ではできる限り止まらないことを重視する。

「地味な種目ですが、握力だけでなく下半身にもかなり疲労が溜まります。8種目の中では一番早く終わる種目になるかと思うので、一度も休まずに走り切るのが理想です

レース後半では「少しだけ休もう」と思ってケトルベルを置いた数秒が、そのまま長い休憩になりやすい。

だからこそ、完全に止まってしまう前に、歩幅やスピードを調整しながら進み続けることも重要だ。

前川選手は持ち方にもポイントがあるという。

ケトルベルは身体の少し前で持つと安定します。グリップのくぼみにしっかり手をはめることもポイントです

腕を必要以上に外側へ広げたり、ケトルベルを大きく揺らしたりすれば、そのたびに握力や体幹を余計に使うことになる。

重量を身体の近くで安定させ、できるだけケトルベルを「暴れさせない」。

200mを速く進むためには、握力そのものを鍛えるだけでなく、握力を浪費しない持ち方も重要だ。

07 Sandbag Lunges(サンドバッグランジ)100m

7種目目はサンドバッグを担いで行うウォーキングランジ。

100mという距離を、左右の脚を使いながら一歩ずつ進んでいく。

後ろ脚の膝を床につけることが基本的な動作基準。サンドバッグを肩で支えた状態を維持しながら行うため、脚だけでなく体幹にも強い負荷がかかる。

そして何より、この時点ですでに7km近く走り、6種目を終えている。

フレッシュな状態で行うランジとは別種目と考えた方がいい。

WATARUさんにとっても大きな課題の一つだ。

「いつもファーマーズキャリーからランジのあたりで足が攣りそうな感覚が出てきます。完全に攣ってしまうと走れなくなるので、かなり慎重に進んでいます

無理にピッチや歩幅を上げず、ときには立ち止まりながら確実に前進する。

「正直に言えば、今も課題種目です。でも、ここを安定させられたとき、日本人初のサブ60が現実になると感じています」

興味深いのが、前川選手は歩幅について別のアプローチを取っていることだ。

歩幅は少し広めがおすすめです。歩幅が狭いと脚がつりやすくなるので、大きめの一歩を意識してください

一見すると、WATARUさんの「歩幅を抑える」という考えとは反対にも見える。

しかし、ここにはHYROX攻略の重要なヒントがある。

全員に共通する唯一の正解フォームがあるわけではないということだ。

疲労度、脚の長さ、筋力、攣りやすい部位によって適切な歩幅やテンポは変わる。

WATARUさんはレース後半で脚を完全に攣らせないため、余裕を残して進む。一方、前川選手は極端に小さな歩幅になることで動作が窮屈になることを避け、やや大きな一歩を推奨する。

自分にとって最も再現性の高い歩幅を、疲労した状態で見つけておくことが重要だ。

08 Wall Balls(ウォールボール)100

最後に待つのがウォールボール。

スクワットを行いながらボールを上方へ投げ、ターゲットへ当てる動作を100回繰り返す。

男子のターゲットは3.00m、女子は2.70m。Openでは男子6kg、女子4kg、Men Proでは9kgを使用する。規定のスクワット深度やターゲットへの到達条件を満たせなければNo Repになる。(ROXNOW⁠)

すでに8kmのランと7種目を終えた身体で100回のスクワット動作を行う。

まさにHYROX最後の砦だ。

WATARUさんは、デジタルターゲットが導入されたレースでNo Repに苦しんだ経験を持つ。

「届いているけど正確に当たっていなくて、ノーレップが何度もあり、正直心が折れそうになりました」

疲れているからこそ、1回を雑にしないことが重要になる。

最近は30回ずつを一つの目安としてレースを組み立てているという。

一方でトレーニングでは、Open重量の6kgで300回をノンストップで行った経験もある。

そしてWATARUさんにとってウォールボールは、単に耐える種目ではない。

過去にはここで前を行く選手を逆転したこともあり、大阪メンズプロダブルスでは先行していた韓国チームを最後に追い詰め、わずか1秒差で逆転して準優勝を果たした。

最終種目だからこそ、大きな順位変動が起こる可能性がある。

前川選手は、100回を効率よくつなぐためのポイントをこう説明する。

ボールと一緒にしゃがむイメージです。顎の前でキャッチし、そのまま同じスピードでスクワットへ入ります。手首を立てて、親指を下にすると安定します

ボールをキャッチしてから「止まり、しゃがみ、投げる」のではなく、キャッチ動作からスクワットを一連の流れとして行う。

100回という回数だからこそ、一回ごとのわずかなロスが大きな差になる。

疲労した状態でも同じ位置でキャッチし、同じ深さまでしゃがみ、同じ軌道で投げられるか。

ウォールボールでは筋持久力と同じくらい、「100回繰り返せるフォーム」が重要になる。

実は8種目だけではない。Roxzoneもタイムに含まれる

HYROXを初めて見る人が見落としやすいのが「Roxzone(ロックスゾーン)」だ。

ランニングコースと各ワークアウトステーションをつなぐ移動エリアで、もちろんこの移動時間もレースタイムに含まれる。つまりステーションが終わってから次のランを始めるまで歩き続ければ、その時間はそのままタイムロスとなる。

レース結果を見る際には、8種目とランだけでなく、この移動時間にも改善余地がある。

「ワークアウトが終わったから休憩」ではなく、止まらず次へ移動する。

トップレベルになるほど、こうした種目と種目の間も重要になる。

またRoxzoneには「IN」と「OUT」があり、入退場方向を間違えればペナルティの対象となる。疲労して判断力が落ちてくる後半ほど注意したいポイントだ。

1kmランも8回すべて同じように走る必要はない

WATARUさん

HYROXではワークアウトだけに目が向きやすいが、合計8kmを走るランニング能力はレースタイムを大きく左右する。

基本は各ステーションの前に約1km。会場によって1kmを構成する周回数は異なり、1~5周程度に分けられることもある。

ランニングコースには内側のFast Laneと外側のRunning Laneが設定され、公式ルールでは4分/km以上のペースで走る選手はFast Laneを使用することとされている。会場スタッフから誘導された場合には、その指示に従う必要がある。

そして大切なのは、8本の1kmを単純な8km走として考えないことだ。

スレッドプッシュ後の1kmと、ローイング後の1kmでは、身体の状態がまったく違う。

例えばスレッドプッシュで大腿四頭筋を使えば、その直後は脚が重くなる。バーピーブロードジャンプ後なら心拍数が上がった状態から走り始める。サンドバッグランジ後には、脚の疲労を抱えたまま最後の1kmを走らなければならない。

つまりHYROXで必要なのは「フレッシュな状態で1kmを速く走る能力」だけではない。

ワークアウト直後でも崩れないランニング能力だ。

だからこそWATARUさんが各種目で繰り返し強調する「頑張りすぎない」という考え方が効いてくる。

スキーエルゴで数秒速くても、次の1kmで30秒落ちれば意味がない。

スレッドプッシュを一度も止まらず押せても、その後に走れなくなればレース全体では遅くなる。

HYROXでは一つひとつの種目の自己ベストではなく、「8km+8種目を最速で終えること」が目的なのだ。

トップ選手2人の攻略法から見えるHYROXの本質

WATARUさんと前川早紀選手のアドバイスを比べると、HYROXで速くなるために必要なものが見えてくる。

WATARUさんが繰り返し語っているのは「レース全体を見ること」

スキーエルゴで飛ばさない。

スレッドプッシュでは、あえて休む。

スレッドプルでは握力を残す。

ローイングでは回復する。

ランジでは脚を完全に攣らせない。

目の前の種目だけなら、もっと速くできる。それでもあえて抑える場面を作る。

約1時間にも及ぶレース全体で見たとき、それが結果的に速くなるからだ。

一方、前川選手のアドバイスから見えてくるのは「小さな技術の積み重ね」。

スキーエルゴでは最初の50cm。

スレッドプッシュでは身体のライン。

スレッドプルではロープの置き方。

バーピーブロードジャンプでは一定のリズム。

ローイングでは戻りで脱力する。

ファーマーズキャリーではケトルベルの位置。

ランジでは歩幅。

ウォールボールではキャッチからスクワットへのつながり。

どれも体力そのものを急激に向上させる方法ではない。

しかし、一つひとつの無駄を減らしていけば、8種目を通したときに大きなタイム差になる。

HYROX攻略に必要なのは、単純な筋力でも、ランニング能力だけでもない。

「疲れないように動く技術」と「疲労した状態でも崩れない能力」、そして「どこで力を使うかを判断する戦略」。

それらすべてを試されるからこそ、HYROXは面白い。

初めて挑戦する人は、まず8種目すべてを全力で速くすることを目指す必要はない。

自分はどこで心拍数が上がるのか。どこで脚が止まるのか。どの種目の疲労が次のランに残るのか。

まずそれを知ること。

そして一つひとつ無駄を減らしていくことが、HYROX攻略への第一歩となる。

※HYROXの重量、距離、動作基準、ペナルティ等はシーズン中にも更新される場合があります。本記事のルール情報は2026年9月時点の公開情報をもとに構成しています。出場時は必ずHYROX公式の最新ルールブック、Technical Briefing、大会当日の案内をご確認ください。

取材・文:FITNESS LOVE編集部

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