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筋トレの疲れが抜けない人へ 日本トップボディビルダー・刈川啓志郎が実践する「回復習慣」

鈴木雅氏の指導の元、リカバリーやコンディショニングに力を入れ、今や日本のトップボディビルダーとなった刈川啓志郎選手。日本トップクラスの筋肉量をつくるトレーニングの背景にあるのは、自分に合ったリカバリーを見つけて徹底することだった。

取材・文:舟橋位於 大会写真:中原義史、中島康介、塚本萌子 コンディショニング写真:北岡一浩 トレーニング写真:岡部みつる、北岡一浩 筋膜リリース施術撮影協力:ちびめが Web構成:中村聡美

リカバリーは次のトレーニングへの準備

━━今回はリカバリーについていろいろ聞いていくのですが、最初に、刈川選手の中でのリカバリーの定義を教えてください。

刈川 トレーニングを終えたら、また次のトレーニングがやってきます。そのときに、前回よりも少しでも漸進できるように、身体を整えて良い状態にすることをリカバリーと捉えています。トレーニングをして、その次のトレーニングはさらにハードに行えるようにするということですね。

━━刈川選手がリカバリーを意識し始めたのはいつごろですか。

刈川 (鈴木)雅さんに出会った2023年です。ちょうど、大会2年目が終わってオフシーズンに入ろうとするタイミングでした。またそれ以前にも、須山(翔太郎)さんの食事会でちびめがさんと親しくなり、ジュラシック筋膜リリースを受けさせてもらったこともあります。

 

━━当時、鈴木さんからはどのようなお話がありましたか。

刈川 一番最初に教えてもらったのは、自律神経の重要性です。交感神経と副交感神経の間の波を正しくつくることから始まりました。その後はコンディショニング関連の指導を受け、現在は、あえてリカバリーを強く意識しなくても、自然にできている状態をつくるような内容でやっています。
その中でも、呼吸は特に意識しています。長く吸って、長く吐くことで呼吸数を減らす取り組みですね。これにより、副交感神経が優位になっている時間を長くするのが狙いです。

━━呼吸でトレーニングの質が高くなるという話もよく聞きます。

刈川 それはありますね。全ての取り組みで呼吸と腹圧は重要です。腹圧が正しくかけられていると代償動作が起きづらいと思います。そのような状態でトレーニングした結果、今はウエストが細くなったことや腹斜筋の質感が良くなったことを感じています。

緊張の幅が強烈なカットを生む

━━鈴木さんの指導を踏まえて、現在効果を感じているリカバリーがあれば教えてください。

刈川 今はジュラシック筋膜リリースが良いですね。リカバリーにおいて、自分の中で最も重要という位置付けかもしれません。背中・ハム・殿部の翌日に施術を受けると、筋肉の不要な緊張が取れて、立ち方が改善したり、関節が正しいポジションに戻ったりするのを顕著に感じます。今は、普段の筋肉の緊張度合いと力を入れたときの緊張度合いの差を大きくすることも意識しています。100%の緊張に対する変化幅が大きくなると、それだけ見栄えが良くなると思います。筋肉の緊張が取れて柔らかくなった結果、今までよりも深く筋肉の溝が出るようにもなりました。強みの脚のカットもそうですね。

 

━━緊張の幅をつくるという発想はなかなか斬新ですね。

刈川 これに関連して、パンプの幅が大きくなったのもあります。ジュラシック筋膜リリースを積極的に行う前は、腕周りのパンプ幅は2〜3㎝だったんです。それが、改めて測ってみたら、6㎝くらいに増えていたんですね。強い力で筋膜を引き伸ばすことや血流の改善が重なって、パンプ幅が増加したのだと思います。これは正直、自分でも驚きましたね。

━━他には、マッサージガンを活用していることも有名です。

刈川 マッサージガンは愛用していて、1日に1時間半は当てています。具体的には、起床後・トレーニング前・トレーニング後・寝る前のタイミングですね。他には、自分でマッサージガンを当てられない腰などは、彼女に徒手でマッサージをしてもらっています。やはり腰が張りやすいので、トレーニングから帰ってシャワーを浴びてから揉んでもらいます。

 

━━その他に、リカバリーを意識してやっているエクササイズなどありますか。

刈川 今シーズンからなんですが、雅さんに「ぶら下がり」をやるように言われています。自分は肩甲骨周りが弱いので、その改善のためです。トレーニング前後に行い、トレーニング後は少し懸垂を織り交ぜたりもします。これにより、筋肉の無駄な緊張が取れている感覚がありますね。

「ぶら下がり」もリカバリー目的で取り入れている。肩甲骨周りを安定させ無駄な緊張を取るため。苦手だった左のリアに効かせやすくなった

━━緊張が取れると、正しく身体が使えるということですか。

刈川 自分は左肩のリアが硬く、外旋と回転をこの部位で取りがちですが、今は代償していた部分をインナーマッスルで正しく支えられるようになったと実感します。

リカバリーを意識したトレーニングの構築

━━トレーニングの分割や内容はいかがでしょうか。

刈川 現在は、週に1回オフを取るサイクルです。5月、6月はオフなしでしたが、疲労が抜けない感じがありました。オフを取ることの重要性に気づいてからは、腰の痛みも減ったように思います。

━━1回のトレーニングのボリュームはどうでしょうか。

刈川 セット数を減らしました。以前は平気で1種目10セットやることもありましたが、今はマックスで5セットです。トータルで50セットやっていたところを30セットまで減らしました。今はセット数ではなく、種目数を増やしてアプローチすることを狙っています。疲労がたまり切らない状態で、それぞれの種目の重量を伸ばしていくことも重視しています。

━━刈川選手のハードトレーニングだと、筋肉痛もそれだけ大きそうです。

刈川 脚トレ後の筋肉痛は特に長く続きますね。トレーニングをしてから4〜5日はひどい筋肉痛が続きます。それから2日間でなんとか回復させて、次のトレーニングに臨むという感じです。他の部位はそこまでひどくはならないのですが、上腕三頭筋は同じように筋肉痛が続きます。自分が得意な部位ほど筋肉痛が続きやすい傾向があると思います。

━━脚トレからの回復にはやはりジュラシック筋膜リリースが不可欠ですか。

刈川 実はここは工夫しているところで、脚トレをしたその日にはジュラシック筋膜リリースは受けないようにしています。というのも、筋肉の発達には、代謝物の蓄積による刺激が大事だと思っているからです。せっかくトレーニングで代謝物をためても、リリースをすれば抜けてしまうと思うんです。そのため、脚トレが終わった後はそのまま休み、翌日以降にジュラシック筋膜リリースを受けるようにしています。

「刈川流」睡眠の考え方

━━あとは、リカバリーといえば睡眠だと思います。

刈川 早寝早起きは一般的に良いものとして扱われますが、自分はそれだと疲れが取れる感じがしませんでした。なので、学校がない日は午前10時か11時まで、11時間近く寝る生活サイクルです。
以前も10時間は寝られていたのですが、学校が始まって8時間睡眠のルーティンになった時期がありました。その結果、やはり身体が回復しない感じが出てきてしまったんです。そこで「これではダメだ」と思い、食事の時間を詰めて睡眠時間を確保したところ、無事、元の回復量に戻せました。適切な睡眠時間は人それぞれですが、自分はこんなやり方です。

━━睡眠の質を良くするために取り組んでいることはありますか。

刈川 寝る前のマッサージガンですかね。部屋を暗くした状態で全身にマッサージガンを当てます。そうすると筋肉の緊張が取れるので、そのまま「ふわっ」と寝てしまうようなイメージです。これもあって、今のところは毎日スムーズに入眠できていると思います。

今年の戦略もリカバリーが肝

━━昨年の日本選手権は、大接戦の末2位でした。振り返ってみていかがですか。

刈川 苦手な種目もギリギリを攻めるような感じでやっていたので、ものすごく疲労がたまっていたと思います。回復できる疲労だったら良いのですが、それに対して動きの改善で向き合えていなかったのが問題でした。

━━昨年の課題を踏まえて、どういった改善が必要でしょうか。

刈川 大会前の減量期の過ごし方や疲労との向き合い方、オフシーズンにおける動きの改善ですね。特に今シーズンの成長や改善を考えると、昨年もいろいろ攻めてやるべきだったと思います。
今年の目標はやはり日本一で、誰も見たことがないような、「美しい」と「かっこいい」を両立した身体をつくりたいですね。リカバリー初心者はまずはいろいろ試してみよう

━━最後に、「リカバリーに興味があるけど何からやるべきか分からない」という人へアドバイスをいただきたいです。

刈川 少し抽象的な話になってしまうのですが、その人に合ったリカバリーのやり方を探っていくことが大事なんじゃないかと思います。信頼できる情報源を元に、1個ずつ自分に合うか試していくと良いのではないでしょうか。変にこだわりを持たず、いろいろやってみるのが大事だと思います。

かりかわ・けいしろう
2001年12月27日生まれ。福岡県出身。身長175㎝。2024年に一気に日本トップへ食い込んだ若き怪物。主な戦績は2022年マッスルゲート東京ベイ大会ボディビル75kg超級優勝。2023年全日本学生ボディビル選手権優勝。2024年東京ボディビル選手権優勝。2024年日本男子ボディビル選手権3位。2025年日本男子ボディビル選手権2位

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