フィットネス HYROX

「この筋肉、HYROXでは邪魔?」ボディビル元日本王者・相澤隼人が挑戦 バーピーでは驚異の種目2位

8月6日から9日までの4日間、幕張メッセ(千葉県千葉市)で「AirAsia HYROX Chiba」が開催された。約1万2000人の参加が見込まれた国内最大規模のHYROXに、異色の経歴を持つアスリートが挑戦した。

ボディビル元日本王者の相澤隼人さんだ。

【写真】相澤隼人さんの大迫力の肉体で魅せるHYROX8種目

HYROX(ハイロックス)は、8回の1kmランと、スキーエルゴ、スレッドプッシュ、スレッドプル、バーピーブロードジャンプ、ローイング、ファーマーズキャリー、サンドバッグランジ、ウォールボールという8種目のファンクショナルワークアウトを交互に行うフィットネスレースである。

相澤さんは大会2日目の男子リレー、翌日のシングルと2日間にわたって出場。ボディビルで鍛え上げた筋肉はHYROXで武器になるのか、それとも8kmを走るうえでは“重り”となってしまうのか。

2日間の挑戦を終えた相澤さんに率直な感想を聞くと、返ってきたのはシンプルな言葉だった。

「もう『楽しかった』という一言にまとめられるかなと思います。もちろんきつさもあるんですけど、それ以上にワクワク感というか、やっていて楽しいなというのをめちゃめちゃ感じました」

「応援の声が生で入ってくる」

相澤隼人さん

相澤さんがHYROXに感じた魅力の一つが、観客と選手の距離の近さだった。

「お客さんとの距離が近いので、応援してくれる人の声が生で入ってくるんですよ。ランニングをしていてもお客さんとの距離が近い。そこは大きかったですね」

さらにHYROXでは、ランだけでなく8種類のワークアウトで他の参加者と直接競り合う場面が生まれる。

「ワークアウトでは隣の人を抜いて『よし!』となったり、逆に抜かれて『うわ、悔しい』となったりする。いろいろな感情がありながら、自分のペースも守らなければいけない。いろいろなものが複雑に絡み合っていて、それが楽しかったですね」

ステージ上で肉体の完成度を競うボディビルとは、競技の性質が大きく異なる。

相澤さん自身も、日本最高峰のボディビル大会を経験してきたからこそ、その違いを強く感じたという。

ボディビル日本選手権とは何が違う?

相澤隼人さん

「HYROXは気軽に挑戦できるところが一つの魅力かなと思います。ボディビルって、正直、生半可な準備では絶対に出られないので」

もちろん、HYROXも決して簡単な競技という意味ではない。相澤さんが魅力に感じたのは、競技レベルを問わず同じ空間を共有できる“間口の広さ”だ。

「筋トレをしている人、ランニングをしている人、いろいろな国の人たちが一つの会場に集まって、みんなでゴールを目指す。ゴールした後には『頑張ったね』と称え合ったりする。そういうコミュニケーションが生まれるだけでも、ボディビルにはない良さがあるなと思いました」

一方で、「ボディビルにはボディビルのロマンがある」とも付け加える。

競技の優劣ではなく、ステージ上で究極の肉体を競うボディビルと、選手や観客が一体となってゴールを目指すHYROX。それぞれに異なる魅力を感じたようだ。

ボディビルで作った筋肉はHYROXでは“邪魔”なのか

相澤隼人さん

では、ボディビル日本王者になるほど発達させた筋肉は、HYROXでは武器になったのだろうか。

逆に「この筋肉がなければもっと速かった」と感じた部分を聞くと、相澤さんは「やっぱりランですかね」と答えた。

HYROXは合計8kmを走る。大きな筋量を持つボディビルダーにとって、ランニングは決して有利な種目とは言い難い。

しかし、実際にレースをしてみると少し印象が違ったという。

「結局、半分がランニングで、半分がワークアウト。ランニングで遅れても、ワークアウトで結構抜いたりすることもありました。でも個人的な感覚では、ランニングでも結構抜かしていたような気がします」

シングルでのラン合計タイムは38分44秒。8本のランを4分27秒から5分13秒でまとめ、最後のRunning 8では失速せず4分27秒を記録した。

それでも相澤さんは「もっと頑張るのであれば、ランニングはもっと練習が必要」と課題を挙げる。

バーピーブロードジャンプで「2位」

相澤隼人さん

一方、ボディビルで培った身体能力を強烈に見せつけた種目もあった。

80mのバーピーブロードジャンプだ。

相澤さんはシングルで同種目を2分18秒で駆け抜け、種目別2位を記録した。

さらに前日に出場した男子リレーでも相澤さんはバーピーブロードジャンプを担当。こちらは2分01秒で種目別3位だった。

つまり、リレー3位、シングル2位と、2日連続でバーピーブロードジャンプの種目別トップ3に入ったことになる。

シングルでは最終的に1時間22分50秒でフィニッシュ。男子総合233位、25~29歳カテゴリー84位という結果だった。

リレーは「人口密度がやばい」

相澤隼人さん

シングルとは違った楽しさがあったのが、佐藤悠介さん、元木鮎人さん、五味原領さん、相澤さんの4人で挑んだ男子リレーだ。

相澤さんはバーピーブロードジャンプとウォールボールを担当した。

「すごく良かったです。やっぱりチームごとに作戦がありますし、リレーのときの待機場所の人口密度がやばいんですよ。それぐらいみんな熱狂していて、『次誰行く?』『今どこだ?』みたいになっている。そのごちゃごちゃ感も楽しさの一つでした」

自分が競技するだけではない。

「応援するのも楽しいんですよ。チームのみんながいるから『頑張れ、頑張れ!』って応援できる。そこもすごく楽しかったです」

チームは1時間40分51秒でフィニッシュ。RUN 2で120秒のペナルティが記録されたなかでの完走となった。

フルの「通し練習」は一度もしていなかった

相澤隼人さん

初挑戦を終え、改善点も明確になった。

「もっとランニングのペースを自分で知るべきだったなと思います」

さらに驚くのが、本番までの練習内容だ。

相澤さんは8kmのランと8種目のワークアウトをすべてつないだ、本番同様の通し練習を一度も行っていなかったという。

「4kmを走って4種目とか、5kmを走って5種目ぐらいまでしかやっていませんでした。通しの練習をちゃんとやっておけば、『これぐらいのペースで行けば、こうなるんだ』というのが分かったと思います」

今回は十分な準備時間を確保できなかったというが、次戦があるなら改善したいポイントだ。

「また出たい」海外HYROXにも興味

相澤隼人さん

では、これでHYROXへの挑戦は終わりなのか。

答えは逆だった。

今後、日本では2027年1月に大阪、4月には名古屋での開催が予定されている。

「出たいですね。もしくは海外旅行を兼ねて行くのもなしではないかなと思っています。今回出てみて、また出たいなと思える大会でした」

そして最後に、どんな人にHYROXを勧めたいかを聞いた。

「フィットネスや筋トレが好き、ランニングが好きとか、少しでも気になった人はどんどん出ていいんじゃないですか。『面白そうだな』『ちょっと出てみたいかも』くらいでもいい。本当に間口が広い大会だと思うので、いろいろな人に広まればいいなと思います」

ボディビル元日本王者という、HYROX参加者の中でもひときわ大きな筋肉を携えて挑んだ相澤さん。

ランニングにはさらなる伸びしろを感じながらも、その筋肉は決して“邪魔”なだけではなかった。バーピーブロードジャンプでは2日続けてトップ3に食い込む身体能力を発揮した。

そして何より、過酷な2日間を終えた元日本王者の第一声が、この競技の魅力を端的に表していた。

「楽しかったです」

次に相澤さんがHYROXのスタートラインに立つとき、今回見つかった課題をどこまで埋めてくるのか。ボディビルダーとハイブリッドレーシングの組み合わせには、まだ先がありそうだ。

文・撮影:FITNESS LOVE編集部

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