
もり・ひろこボディフィットネス東京大会4連覇、日本代表としてアジア大会などの国際大会に出場。トレーナーとして活動する一方、フィットネスジムのコンサルティング、サプリメント開発を行う。
※Woman's SHAPE&Sports vol.30に掲載された「森弘子に学ぶ!女性のための栄養学 vol.14 AGEsを増やさない食べ方で老化を防止する・筋肉を守る」をWEB用に編集したものです。
その調理法が老化を促進する!?
食材を安全においしく食べるための加熱調理が、健康にデメリットをもたらす場合があることをご存知でしょうか?香ばしいトースト、熱々の唐揚げ、皮目をパリッと焼いた魚のソテー……食欲をそそります。こうした焼く・揚げる・炒めるなど水を使わない乾式加熱による調理では、食品中のアミノ酸と糖が加熱で反応して褐色化と香ばしい風味を生みだします。これを「糖化反応」または「メイラード反応」と言います。先にあげたトーストなども焼き色やこげめがあってこそのおいしさですが、残念なことにメイラード反応は、老化の原因の1つと考えられている「AGEs(終末糖化物質)」を生み出してしまうのです(本稿では触れませんが、発がん性が疑われるアクリルアミドも生じます)。
AGEsは筋肉にもダメージを与える!
山岸昌一氏(※1)によると、AGEsは体を構成するタンパク質に直接くっつきタンパク質の機能を低下させたり、細胞表面のAGEs受容体と結びついて身体中の細胞に炎症を起こし、血管・皮膚・骨・臓器など全身のさまざまな機能を衰えさせ、老化を促進します(※2)。海外の報告では、体内のAGEsの量が多い人ほど糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患が起こる頻度が高く、死亡するリスクも高いこともわかりました。
骨格筋も例外ではなく、AGEsの影響を被ります。骨格筋内への終末糖化物質の蓄積が、骨格筋収縮機能および筋形成能を低下させるという研究報告があります。この報告では中高年のみならず若年者でもAGEs蓄積状態と運動機能および骨格筋機能低下との間に関連性があることが確認されています(※3)。
また、「AGEsは筋力トレーニングの効果を妨げる運動抵抗性を有して」いるばかりか、「筋細胞構造にダメージを与える」(※3)とも示唆されており、トレーニーとしては非常に気にかかるところです。
本誌において故・石井直方先生から運動によって骨格筋が分泌するホルモン様の物質「マイオカイン」が全身の臓器とコミュニケーションをとることで、さまざまな機能が維持されているというお話を伺いました。私たちは体の司令塔としてまず〈脳〉を思い浮かべますが、むしろマイオカインを分泌する骨格筋が、体という〈組織〉の重要な司令塔の役目を担っており(※4)、この観点から見れば、骨格筋の衰えはすなわち体の〈司令塔〉の衰えという極めて由々しき事態をも意味するのです。
糖化させない調理法
糖化が私たちの体にとって望ましくないものであるならば、出来るだけその影響を逃れたいものです。
体内に貯まるAGEsには、食事から摂取した糖が体内のタンパク質と結びついて生成された内因性のものと、調理で糖化した食品を摂取することによる外因性のものがあります。山岸氏によれば、血糖値が高ければ高いほどタンパク質と結びつきやすくなり糖化が促進されるので、食後血糖値を急激にあげない食べ方が推奨されます(※2)。
一方の外因性のAGEsを抑えるためには、食品中のAGEsが増えないようメイラード反応が起きない低温の湿式調理=茹でる、煮る、蒸すことを積極的に選択すると良いでしょう。外因性のAGEsのうち約10%が血中に吸収されるという報告もあり(※5)、食品選択や調理方法の知識に基づいた、日々の地道な工夫と努力の積み重ねが、健康で若々しい未来につながるのではないでしょうか(※2)。
蒸し料理はすごい
なかでも「蒸す」調理法は、AGEsを増やさないだけでなく、さまざまなメリットを持ちます。
①栄養損失が少ない
蒸す調理は茹でるよりも栄養素の損失が少ないというメリットがあります。例えばほうれん草を茹でた場合、ビタミンCは35%失われますが、蒸した場合の損失率はたったの3%です。キャベツを茹でる場合は47%損失しますが、蒸す場合は15%ほどの損失に留めることができます(※6)。
ブロッコリーは、抗酸化力の強いグルコシノレートを含有しますが、茹で時間が長いほどグルコシノレートが減少したのに対し、中心温度95度までの蒸し加熱の場合、損失はほぼなかったという報告もあります。
②蒸すことで栄養効果が増す
蒸すことで栄養素が強化される場合もあります。さつまいもは水溶性および不溶性の食物繊維やレジスタントスターチなど腸内環境を整えるのに欠かせない成分を多く含みますが、蒸すことで不溶性食物繊維とレジスタントスターチが有意に増えたという報告があります(※7)。この報告でさらに興味深いのは、電子レンジの加熱ではその変化が生じていないということです。ちょっとの手間で栄養的なメリットが増すなら、蒸す調理を選択したいものです。
③調理時間が短い
蒸すのは時間がかかると思われがちですが、茹でるよりも火が早く通ります。蒸し料理は食材を水蒸気によって加熱します。水蒸気が食材に触れると温度が下がり、水に戻る瞬間(凝縮)に熱を一気に放出します。この時のエネルギーは水蒸気1gあたり540kcalととても大きいため短時間の加熱ですむのです(※8)。このように蒸し料理は加熱時間が短く、かつ湿潤下で乾燥しにくく、食材をしっとりふっくらと仕上げることが得意です。
※1 昭和医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授
※2『早死にしない!老ける食べ方×若返る食べ方』永岡書店/食品&調理別AEG含有量データの掲載もあり
※3「糖化ストレスによる骨格筋機能低下:運動抵抗性誘導因子としての着目」江川達郎他 Glycative Stress Research 2022;9 (4):199-205(c) Society for Glycative Stress Research
※4 マイオカインについては本誌vol.27に掲載
※5「食事由来のAGEsは炎症を増悪させる外的要因である」伊藤里恵ほか 日本食品化学会誌 vol.30 2023
※6「寒冷地における日常食品の栄養学的研究」大原久友他 帯広畜産大学栄養研究室
※7「加熱方法の違いがさつまいもの食物繊維量と物理的性質に及ぼす影響」池田倫子 他 日本家政学会誌 vol.71
※8『料理の科学 加工・加熱・調味・保存のメカニズム』齋藤勝裕 SBクリエイティブ株式会社
せいろでおいしい時短調理
ここではせいろを使った蒸レシピをご紹介します。せいろ=料理上級者のイメージがあるかもしれませんが、せいろは料理に慣れていない方や忙しい方こそ活用してほしい、時短・失敗なしの調理アイテムです。
蒸しハンバーグ
玉ねぎを炒めずに混ぜ込むので、調理手順も少なく簡単です。付け合わせ野菜も一緒に蒸すのがおすすめです。
【材料】(2〜3人分)
合い挽き肉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300g
玉ねぎ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・半個
しめじ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1株
パン粉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30g
卵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1個
塩・コショウ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
ナツメグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・少々
付け合わせのにんじんやじゃがいもなどの野菜・・・適宜
【作り方】
①玉ねぎとしめじをみじん切りする。
②玉ねぎとパン粉を混ぜ合わせ、玉ねぎの水分をパン粉に染み込ませる。
③合い挽き肉に塩、コショウ、ナツメグ、卵を入れて良くこねる。
④③にみじん切りしたえのきと②を入れてよく混ぜ合わせる。
⑤等分に分けて成形し、クッキングペーパーを敷いたせいろに並べる。
⑥蒸気があがった鍋やフライパンにせいろを設置し、⑤と付け合わせの野菜を10分蒸す。
※野菜の蒸し時間は適宜調整してください。
オールインワン減量食
体重コントロールの定番食材もせいろで一気に調理できます。
【材料】(2〜3人分)
鶏胸肉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1枚
ブロッコリー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・半株
さつまいも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1本
卵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2個
【作り方】
①鶏胸肉をフォークで数箇所突き刺してから、塩麹をまぶし1時間程度置く(一晩ほど置くとより美味しい)。
②さつまいもを1センチ幅に切る。
③ブロッコリーを切る。
④クッキングペーパーを敷いたせいろにすべての材料を(鶏胸肉は皮目を上に向けて)並べて、蒸気があがった鍋やフライパンにせいろを設置して蒸す。ブロッコリーは4分、卵は6分(とろとろの半熟)で取り出す。さつまいもと鶏胸肉は10分蒸したのち、火を止めてせいろに入れたままで10分置く。
時短朝ごはん〜オムレツ、蒸し豆腐、塩鮭ときのこの包み蒸し、ご飯〜
定番朝ごはんもせいろで一気に仕上げましょう。
【材料】(1人分)
卵・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1個
牛乳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ2
ミニトマト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2〜3個
塩・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
コショウ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
絹ごし豆腐・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
塩鮭・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適宜
シメジやエノキ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適宜
冷やご飯や冷凍ご飯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
【作り方】
①下準備を行う。
〈オムレツ〉❶卵を溶き、牛乳を混ぜる。❷ミニトマトを刻み ❶に入れ、塩コショウで味付けする。❸クッキングシートの端をキャンディ状にひねり、❷を流し込む。
〈蒸し豆腐〉❶豆腐を軽く水切りして、好みの大きさに切る。❷クッキングシートで包む。※蒸し上がったら、天然塩などでシンプルに食べるのがおすすめです。
〈塩鮭ときのこの包み蒸し〉塩鮭と好みのきのこをクッキングシートで包む。
〈ご飯〉冷やご飯や冷凍ご飯をクッキングシートに乗せる。
②上記すべての素材をせいろに並べて蒸気があがった鍋やフライパンに設置して7分蒸す。
※オムレツは4〜5分程度で取り出す。
文・写真・レシピ_森 弘子










